自己肯定感の定義
自己肯定感とは、「自分には価値がある」と感じられる心の状態のことです。
たとえ失敗しても、「それでも自分は大丈夫」と思えることが、自己肯定感のある人の特徴です。
心理学者の内田伸子氏によれば、自己肯定感は「自己受容」と「自己効力感」の2つから成り立つと言われています。
- 自己受容:そのままの自分を受け入れる力
- 自己効力感:自分にはできるという感覚
この2つのバランスが整うことで、前向きに人生を歩む力が育まれます。
自己肯定感を高める7つの方法
1. 小さな成功体験を積み重ねる
「成功体験」といっても、大きな目標でなくて構いません。
- 朝決めた時間に起きられた
- やろうと思っていたメールを送れた
- ゴミ出しを忘れずにできた
こうした「自分との約束を守れた」経験を毎日少しずつ重ねることで、自己効力感が高まり、「自分にもできる」という感覚が育ちます。
ポイント
できたことを手帳やスマホのメモに記録すると、客観的に自分の成長が見えて自信につながります。
2. 自分を否定する言葉を減らす
無意識に使っている「自己否定ワード」は、自己肯定感を大きく下げます。
×「どうせ自分なんて」
×「また失敗した、ダメだな」
×「あの人に比べて自分は…」
代わりに、次のような言い換えを意識してみてください。
〇「今回はうまくいかなかったけど、次に活かせる」
〇「自分なりによく頑張った」
〇「比べるのは過去の自分と」
ポイント
言葉は脳に強く影響を与えます。口癖を変えるだけでも、心の状態が前向きになります。
3. 「できていること」に注目する習慣をつける
人はどうしても「できていないこと」に目が向きがちですが、それでは自信が育ちにくくなります。
毎日、「今日できたこと」を3つ書き出すだけで、自分の行動をポジティブに見直す習慣ができます。
たとえば…
- 今日の食事をきちんと作った
- 仕事で確認ミスが減った
- 家族に優しい言葉をかけた
心理的な裏付け
これは「ポジティブ心理学」に基づいた方法で、ポジティブな体験を言語化することで、幸福感や自己肯定感が高まりやすくなると報告されています(出典:マーティン・セリグマン『ポジティブ心理学』)。
4.完璧主義を手放す
自己肯定感が低い人に多いのが「完璧主義」の傾向です。
「ミスしたらダメ」「ちゃんとやらなきゃ認められない」と、自分に対して過剰な期待や基準を課してしまうことで、失敗を恐れるようになり、行動力が低下してしまいます。
手放し方のヒント
- 80点でも「十分できた」と評価する
- 「やらないよりマシ」と考える
- 他人の完璧も「見えている一部だけ」と知る
完璧を目指すのではなく、「自分にできることを、できる範囲でやる」
これが長く続けられる自己肯定感の育て方です。
5. 他人と比較しない視点を持つ
SNSや学校・職場などで、つい人と自分を比べてしまい、「あの人はすごいのに自分は…」と落ち込んでしまうことはありませんか?
自己肯定感を保つ比較の仕方
- 他人ではなく「昨日の自分」と比べる
- 他人の成果は「参考」として見る
- 「人には人のペースがある」と自覚する
心理学ではこれを「内的基準志向」といい、自分自身の中に評価軸を持つことで、外的な評価に振り回されずに自己肯定感を保てるとされています。
6. 「ありがとう」を言う・受け取る
感謝の言葉を使うことは、自己肯定感にも良い影響を与えます。
また、自分が感謝されたときに「素直に受け取る」ことも同様に大切です。
日常でできること
- コンビニや飲食店で「ありがとう」を意識的に伝える
- 友人・家族に「助かったよ」と声をかける
- 感謝されたときは「いえいえ」ではなく「どういたしまして」と返す
感謝のやり取りは、**「自分も誰かの役に立てる存在だ」**という実感につながり、自己肯定感を支える土台になります。
7. 自分の価値観と向き合う
最後に大切なのが、「自分はどんなことに価値を感じているのか」を理解することです。
他人の価値観や一般的な「成功モデル」に振り回されていると、いつまでも満たされません。
価値観を明確にする質問
- どんなときに嬉しいと感じる?
- 子どもの頃、夢中になったことは?
- もし時間とお金に余裕があるなら、何をしたい?
自分の価値観に気づくことで、「自分らしい選択」ができるようになります。
これは自己肯定感を根本から支える非常に重要な力です。
自己肯定感を高めるための環境づくり
自己肯定感は、**「努力」よりも「環境」**で左右されることもあります。
- 批判ばかりする人から距離を取る
- 自分を肯定してくれる人と話す
- 「失敗しても許される場所」を持つ
こうした環境を整えることも、心理的に非常に大きな意味があります。
自己肯定感が低くなる原因とは?
まずは、自己肯定感がなぜ低くなるのか、その要因を知っておきましょう。
原因を理解することで、改善へのヒントも見つかりやすくなります。
1. 幼少期の経験
幼いころに「失敗ばかり指摘された」「褒められた記憶が少ない」という経験があると、自分に自信が持ちにくくなります。
また、親の期待が高すぎたり、条件付きの愛情(「○○できたら偉いね」)が続くと、「できない自分には価値がない」と感じやすくなります。
2. 他人と比較される環境
学校や家庭で「○○ちゃんはできるのに、あなたは…」と言われ続けると、「自分は劣っている」という思い込みが根付きます。
SNSの普及も、「他人の成功ばかりが目に入る」状態を生みやすく、無意識の比較で自己否定感が強まります。
3. 完璧主義・自分への厳しさ
「もっと頑張らなきゃ」「失敗=ダメ」といった極端な思考は、常に自分を否定するクセを生みます。
これが長く続くと、「どうせ自分なんか…」という思考パターンに陥ってしまうのです。
年齢別・自己肯定感の育て方のポイント
子ども(幼児~小学生)
- 結果よりも「過程」をほめる
例:「よく考えて頑張ったね」「工夫してたね!」 - 自分の気持ちを言葉にする練習
例:「どんな気持ちだった?」「うれしかったんだね!」 - 否定的な言葉を避ける
NG:「なんでできないの!」 → OK:「ここは一緒にやってみようか」
思春期(中高生)
- 自分の考えを尊重する
→ 「それも一つの考え方だね」と認める言葉がけが効果的。 - 結果をすぐに評価しない
→ 「うまくいかなかったけど、チャレンジしてえらい」と行動を認める。 - 比較ではなく、成長に目を向ける
→ 「前より続けられるようになったね」と変化を伝える。
大人(20代〜シニア)
- 成功体験を「記録」する
→ 書き出すことで自分の価値を可視化しやすくなる。 - 人間関係の断捨離も大切
→ 自分を否定する人からは距離を取る選択を。 - 自己理解のために「価値観ワーク」や「ライフラインチャート」なども有効。
自己肯定感チェックリスト(簡易版)
当てはまる項目が多いほど、自己肯定感が低下している可能性があります。
チェックはあくまで参考ですが、自分の傾向を知るきっかけにしてください。
✅ 失敗したときに「自分はダメだ」と思う
✅ 他人に認められないと不安になる
✅ SNSを見て落ち込むことが多い
✅ 自分の意見を伝えるのが苦手
✅ 褒められても素直に受け取れない
✅ 何かを始める前に「自信がない」と思う
✅ 人の期待に応えようと無理をしがち
3個以上当てはまる方は、今回ご紹介した方法をぜひ実践してみてください。
まとめ
自己肯定感は、生まれつきではなく「育てるもの」です。
日々の習慣・考え方・人間関係を見直すことで、少しずつでも自分を認められる力がついていきます。
本記事のポイントを振り返ると:
- 自己肯定感は「自己受容」+「自己効力感」で構成される
- 小さな成功体験・ポジティブな言葉・完璧主義の見直しが効果的
- 比較せず、自分の価値観を大切にする
- 年齢に応じた育て方がある
- チェックリストで傾向を見える化することもおすすめ
焦らなくて大丈夫。今日できた小さなことに目を向けることから、自己肯定感の第一歩が始まります。