不登校・引きこもりの子どもが抑うつ状態にあるとき、家族はどう関わればいい?――心理学から考える家庭での接し方

「以前は好きだったゲームにも興味を示さなくなった」
「一日中寝ていて、何をする気力もないように見える」
「学校や将来の話をすると、『どうせ自分なんて』と言う」
不登校や引きこもりのお子さんを持つ保護者の方から、こうしたお話を伺うことがあります。
学校に行かなくなっただけでなく、以前より元気がなくなり、好きだったことにも関心を示さなくなる。家族との会話も減り、部屋で過ごす時間が増えていく。
そのような姿を見ていると、保護者の方も心配になると思います。
「励ましたほうがいいのだろうか」
「そっとしておいたほうがいいのだろうか」
「このまま何もしなければ、ますます引きこもってしまうのではないか」
今回は、不登校や引きこもりの状態にあるお子さんが抑うつ的になっているとき、家族はどのように関わればよいのかを、心理学の視点から考えてみたいと思います。

目次

「怠けている」のではなく、気力が低下しているのかもしれない

抑うつ状態とは、気分の落ち込みや意欲の低下、物事への興味や喜びの減少などが見られる状態を指します。
例えば、以前は楽しんでいた趣味に関心を示さなくなったり、ちょっとしたことでも疲れやすくなったり、物事を考えることが難しくなったりすることがあります。
また、睡眠や食欲に変化が生じることもあります。
朝起きられなくなる場合もあれば、反対に眠れなくなる場合もあります。
こうした状態にあるとき、周囲からは「何もしていない」「やる気がない」ように見えることがあります。
しかし、本人にとっては、日常生活のちょっとした行動にも大きな負担が伴っているかもしれません。
例えば、朝起きること。
着替えること。
食事をすること。
家族と会話すること。
元気なときには当たり前にできていたことが、抑うつ状態では難しくなる場合があります。
そのため、本人に対して「少しは頑張りなさい」「いつまで寝ているの」と声をかけても、必ずしも行動につながるとは限りません。
むしろ、本人がすでに「自分は何もできない」と感じている場合には、そうした言葉が自責感を強めてしまうこともあります。
まず大切なのは、本人が何をしていないかだけではなく、今どのようなことが難しくなっているのかを理解しようとすることです。
なお、こうした症状があるからといって、必ずしもうつ病であるとは限りません。身体疾患や睡眠の問題、ほかの心理的な困難などが関係している場合もあります。
気分の落ち込みや意欲の低下が続き、日常生活に支障が出ている場合には、医療機関での評価も大切です。

「頑張って」という励ましが負担になることもある

落ち込んでいる人を見ると、周囲は何とか元気づけようとするものです。
「気分転換に外に出てみたら?」
「少しでも学校に行けば、気持ちが変わるかもしれないよ」
「いつまでも落ち込んでいても仕方ないでしょう」
こうした言葉も、本人を心配する気持ちから生まれているのでしょう。
しかし、抑うつ状態にある人にとって、励ましが負担になることがあります。
例えば、本人が「学校に行きたいけれど、どうしても体が動かない」と感じている場合です。
そのようなときに「頑張って学校に行こう」と言われると、本人は「頑張れない自分が悪い」と感じてしまうかもしれません。
ただし、抑うつ状態にある人を一切励ましてはいけない、というわけではありません。
本人が何かに取り組もうとしているとき、周囲の応援が支えになることもあります。
大切なのは、本人の状態を理解しないまま、努力や前向きさを求めないことです。
例えば、
「学校に行けるように頑張ろう」
と伝える代わりに、
「今は学校に行くことが、かなりしんどいんだね」
と、本人の状態を理解しようとする。
「少しは外に出たら?」
と促す前に、
「最近、外に出ることについてはどう感じている?」
と尋ねてみる。
こうした関わりによって、本人が自分の状態を話しやすくなることもあります。
もちろん、本人が話したくない場合には、無理に聞き出す必要はありません。

「休ませること」と「何もしないこと」は同じではない

抑うつ状態にあるお子さんへの対応では、休息が重要になることがあります。
特に、強い疲労や睡眠不足、精神的な負担が重なっている場合には、学校や活動への参加を無理に求めず、心身の負担を減らすことが必要です。
しかし、ここで一つ考えておきたいことがあります。
それは、休息が必要であることと、長期間にわたって活動を減らし続けることが望ましいかどうかは、別の問題であるということです。
抑うつ状態では、意欲や気力が低下するため、活動することが難しくなります。
すると、それまで楽しんでいたことや、人と関わる機会が減っていきます。
活動が減ることで、達成感や楽しさを感じる機会も少なくなります。
その結果、さらに気分が落ち込み、ますます活動しにくくなることがあります。
認知行動療法では、こうした悪循環に注目することがあります。
例えば、
気分が落ち込む。
何もする気が起きなくなる。
部屋で過ごす時間が増える。
楽しいことや達成感を得られる機会が減る。
さらに気分が落ち込む。
という循環です。
そのため、抑うつ状態からの回復を考えるときには、休息を確保するだけでなく、本人の状態に応じて、少しずつ活動を取り戻していくことも重要になります。
ただし、強い抑うつ症状がある場合や、体調が著しく悪い場合に、無理に活動を増やすことは適切ではありません。
まずは医療機関などで状態を確認し、必要な治療や休息を確保することが優先されます。

小さな活動から始める「行動活性化」という考え方

認知行動療法には、行動活性化と呼ばれるアプローチがあります。
これは、気分がよくなるのを待ってから行動するのではなく、無理のない範囲で活動を少しずつ増やすことで、気分や生活の改善を目指す方法です。
例えば、抑うつ状態にある人は、
「元気になったら散歩しよう」
「やる気が出たら部屋を片づけよう」
と考えることがあります。
しかし、気分が落ち込んでいるときには、待っていてもなかなか意欲が湧かないことがあります。
そのような場合には、今できる程度の小さな行動から始めることが役立つ場合があります。
例えば、

  • 朝、カーテンを開けて日光を取り入れる
  • 好きな音楽を一曲だけ聴いてみる
  • 家族と一緒にお茶を飲む
  • ベランダや玄関先に少しだけ出てみる
  • 興味のあることについて、短い時間だけ取り組んでみる
    といったことです。
    ここで重要なのは、活動の大きさではありません。
    本人にとって負担が少なく、実行できそうなことから始めることです。
    また、活動した後に、本人がどのように感じたかを確認することも大切です。
    「やってみたら少し気分がよかった」
    「思ったより疲れてしまった」
    「特に何も変わらなかった」
    どのような反応であっても、その経験を次の活動を考えるための手がかりにできます。
    ただし、家庭で無理に行動活性化を実施しようとする必要はありません。
    本人が強く拒否している場合には、活動を押しつけるのではなく、何が負担になっているのかを考えることが大切です。

「できたこと」を評価しすぎない

抑うつ状態にあるお子さんが、久しぶりに外出したり、家族と会話したりすると、保護者の方はうれしく感じると思います。
「今日は外に出られたね!」
「やればできるじゃない!」
「明日も頑張ろう!」
と声をかけたくなるかもしれません。
しかし、こうした言葉が、本人にとって負担になることもあります。
例えば、本人が無理をして外出した場合、「明日も頑張ろう」と言われることで、次も同じように行動しなければならないと感じるかもしれません。
また、外出できた日だけ周囲が喜ぶと、外出できない自分には価値がないと受け止めてしまう場合もあります。
もちろん、本人の努力を認めることが悪いわけではありません。
大切なのは、結果だけを評価するのではなく、本人の気持ちや経験に関心を向けることです。
例えば、
「今日は外に出てみて、どうだった?」
「疲れなかった?」
「また行きたいと思った?」
と尋ねてみる。
本人が「疲れた」と答えたのであれば、その疲れも尊重する。
「もう行きたくない」と言ったのであれば、何が負担だったのかを一緒に考える。
そうした関わりによって、本人が自分の状態を理解し、無理のない活動の仕方を見つけていくことにつながります。

「死にたい」「消えたい」と言われたときは

抑うつ状態が強くなると、「死にたい」「消えたい」「生きていても意味がない」といった言葉が聞かれることがあります。
このような発言があった場合には、軽く受け流さず、真剣に受け止めることが必要です。
「そんなこと言わないで」
「命を粗末にしてはいけない」
と否定したり、説得したりする前に、まず本人がどのような気持ちでいるのかを聞いてみてください。
例えば、
「それほどつらい気持ちなんだね」
「今、どんなことが一番苦しい?」
といった声かけが考えられます。
また、自殺について考えているのか、具体的な方法や計画があるのかを、落ち着いて直接確認することも大切です。
自殺について尋ねること自体が、自殺を促すわけではありません。
具体的な計画や準備がある場合、すでに自傷行為をしている場合、差し迫った危険が疑われる場合には、本人を一人にせず、速やかに医療機関や救急サービスに相談してください。差し迫った危険がある場合は119番への連絡が必要です。
また、具体的な計画が確認できなくても、「死にたい」という発言がある場合には、早めに医療機関や専門家に相談することが望まれます。
保護者だけで抱え込まず、専門的な支援につながることが大切です。

医療機関への相談を考えたいとき

不登校や引きこもりの状態にあるお子さんが抑うつ的になっている場合、心理的な支援だけでなく、医療機関での評価が必要になることがあります。
特に、次のような状態が見られる場合には、医療機関への相談を検討してください。

  • 気分の落ち込みや意欲の低下が長く続いている
  • 以前楽しんでいたことに、ほとんど興味を示さなくなった
  • 睡眠や食欲に大きな変化がある
  • 日常生活を送ることが著しく難しくなっている
  • 自分を強く責めたり、無価値だと感じたりしている
  • 「死にたい」「消えたい」といった発言がある
    うつ病などの精神疾患が背景にある場合には、医療機関での治療が必要になることがあります。
    また、身体的な病気が、疲労感や意欲の低下などに関係している可能性もあります。
    そのため、心理的な問題だと決めつけず、必要に応じて小児科や内科、児童精神科、精神科などに相談することが大切です。
    本人が受診を嫌がっている場合には、まず保護者が医療機関や地域の相談窓口に相談し、今後の対応について助言を受ける方法もあります。

家族自身の生活も大切にする

抑うつ状態にあるお子さんを支えることは、保護者にとっても大きな負担になることがあります。
本人が元気をなくしている姿を見るのはつらいものですし、何とかしてあげたいと思っても、思うように状況が変わらないこともあるでしょう。
そのような生活が続くと、保護者自身も疲弊してしまうことがあります。
しかし、子どもが元気をなくしているからといって、保護者まで自分の生活を犠牲にし続ける必要はありません。
友人と会うこと。
趣味を楽しむこと。
仕事に取り組むこと。
自分自身の休息を確保すること。
こうした時間を持つことは、子どもを見捨てることではありません。
むしろ、保護者自身が心身の健康を保つことは、長期的に子どもを支えていくうえでも重要です。
また、子どもの状態について悩んでいる場合には、保護者自身がカウンセリングなどの支援を利用することもできます。
子どもを支える人にも、支えが必要なのです。

IPELで大切にしていること

IPELでは、不登校や引きこもりの状態にある方について、学校に行けているか、外出できているかといった行動だけでなく、その背景にある心理状態を理解することを大切にしています。
例えば、学校に行かない、部屋から出てこない、何もする気力がないといった状態が見られる場合にも、それを単に本人の意欲や努力の問題として捉えることはしません。
今、どのようなことに困っているのか。
どのような活動が負担になっているのか。
何をしているときに、少しでも安心できるのか。
そうしたことを丁寧に整理しながら、ご本人に合った支援の方法を考えていきます。
また、抑うつ状態にある方への支援では、休息を確保することと、少しずつ活動を取り戻していくことのバランスが重要になります。
そのため、本人の状態に応じて、認知行動療法の考え方なども取り入れながら、無理のない活動や生活の整え方を一緒に検討していきます。
もちろん、医療機関での評価や治療が必要と考えられる場合には、適切な医療につながることも大切にしています。
また、保護者の方から、
「子どもが一日中寝ているけれど、どう接すればいいのかわからない」
「励ましたほうがいいのか、そっとしておいたほうがいいのか悩んでいる」
「本人に何かを勧めると、かえって落ち込んでしまう」
といったご相談をいただくこともあります。
そのようなときには、臨床心理士が心理学の視点から現在の状況を整理し、ご本人とご家族に合った関わり方を一緒に考えていきます。
Fun Stepでは、通所・オンライン・家庭訪問による支援に加え、保護者の方へのカウンセリングも行っています。
抑うつ状態にある人に必要なのは、無理に前向きになることではありません。今のつらさを理解してもらいながら、自分のペースで少しずつ生活を取り戻していくことです。
お子さんの気分の落ち込みや意欲の低下、不登校・引きこもりについてお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

Fun Stepを運営する合同会社アイペル(大阪市淀川区)は、不登校や引きこもりの状態にある方の支援を行っております。
教室への通所やオンライン面談や家庭訪問といった方法で、お困りの方の相談に取り組みます。

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