不登校の子どもに将来の話をしてはいけないのか?――「プレッシャーをかけない」と「何も言わない」の間で

「将来の話をすると、子どもが不機嫌になってしまう」
「進路について聞いても、『わからない』としか答えてくれない」
「本人の負担になると思って、学校や勉強の話を避けるようにしています」
不登校のお子さんを持つ保護者の方から、このようなお話を伺うことがあります。
子どもにプレッシャーをかけたくない。一方で、進学や就職のことを考えると、何も言わずにいることにも不安を感じる。
この二つの気持ちの間で、悩んでいる保護者の方は少なくないのではないでしょうか。
不登校の支援では、「本人のペースを尊重しましょう」「焦らず見守りましょう」と言われることがあります。
もちろん、こうした考え方は大切です。
しかし、それは「将来の話をしてはいけない」「進路について考えさせてはいけない」という意味ではありません。
今回は、不登校のお子さんとの将来や進路についての話し合いを、心理学の視点から考えてみたいと思います。

目次

将来の話が、なぜプレッシャーになるのか

将来について考えることは、必ずしも悪いことではありません。
むしろ、自分がどのような生活を送りたいのか、何に興味があるのかを考えることは、自立に向けた大切な過程です。
しかし、不登校の状態にある子どもにとって、将来の話が強い負担になることがあります。
例えば、学校に行けないことについて、本人自身がすでに強い焦りを感じている場合です。
「このままでは高校に行けないかもしれない」
「みんなから遅れてしまっている」
「将来、仕事に就けないかもしれない」
こうした不安を抱えている子どもに対して、保護者が「将来どうするの?」と尋ねると、本人が感じている不安をさらに強めてしまうことがあります。
また、将来について考えようとしても、今の生活で精一杯で、具体的なことを想像できない場合もあります。
強い不安や抑うつ状態にあるときには、物事を前向きに考えたり、複数の選択肢を比較したりすることが難しくなることもあります。
そのような状態で将来の決断を求められても、本人は答えられないかもしれません。
つまり、将来の話そのものが悪いのではなく、本人の心理状態によっては、将来について考えること自体が大きな負担になるのです。

「将来どうするの?」という質問の難しさ

保護者の方が何気なく口にする「将来どうするの?」という言葉。
この質問には、実は答えるのが難しい側面があります。
それは、質問の範囲が非常に広いということです。
進学するのか、働くのか、どこで暮らすのか、どのような人生を送りたいのか。
大人であっても、こうした問いにすぐ答えられる人ばかりではありません。
ましてや、現在の学校生活や人間関係に困難を抱えている子どもにとっては、将来について具体的な見通しを立てることが難しい場合もあります。
そのため、「将来どうするの?」と尋ねられると、本人は何を答えればよいのかわからず、黙り込んでしまうことがあります。
また、この言葉が、
「いつまで学校を休んでいるつもりなの?」
「このままでは困るでしょう?」
という意味に聞こえてしまうこともあるでしょう。
もちろん、保護者にそのような意図がなくても、本人がそう受け取る可能性はあります。
だからこそ、将来について話すときには、質問の内容や伝え方を工夫することが大切です。

将来の話を「決断」ではなく「探索」にする

心理学では、青年期は自分が何者であるのか、どのような生き方をしたいのかを模索する時期だと考えられています。
この時期には、さまざまな経験を通して、自分の興味や価値観を少しずつ理解していくことが重要になります。
そのため、将来について話すときにも、いきなり結論を求める必要はありません。
例えば、
「高校はどうするの?」
と尋ねる代わりに、
「今、少しでも興味のあることってある?」
と聞いてみる。
「将来は何の仕事をするの?」
と尋ねる代わりに、
「どんなことをしている時間が楽しい?」
と聞いてみる。
こうした会話は、進路を決めるためのものというより、本人の興味や関心を理解するためのものです。
もちろん、これらの質問にも答えたくない場合はあるでしょう。
そのときには、無理に聞き出す必要はありません。
大切なのは、将来について話すことを、正しい答えを出さなければならない場面にしないことです。
将来の話は、決断を迫るためだけでなく、本人の可能性や選択肢を一緒に探すためにもできます。

「今は考えられない」という答えも尊重する

将来について尋ねたとき、子どもから、
「わからない」
「考えたくない」
「どうでもいい」
という返事が返ってくることがあります。
保護者としては、心配になるかもしれません。
しかし、こうした言葉が必ずしも「将来について何も考えていない」ことを意味するわけではありません。
本人なりに考えていても、うまく言葉にできない場合があります。
考えること自体がつらく、いったん距離を置きたい場合もあるでしょう。
そのようなときには、
「今は考えたくないんだね」
「また話したくなったら教えてね」
と、一度話を終えることもできます。
ただし、進路選択には出願期限や手続きなど、現実的な制約もあります。
そのため、本人の気持ちを尊重しながらも、必要な情報は伝えておくことが大切です。
例えば、
「今すぐ決めなくてもいいけれど、出願の締め切りは来月だから、それまでに一度相談できるといいね」
といった伝え方も考えられます。
本人の意思を尊重することと、現実的な情報を伝えることは両立できます。

将来への不安を、親だけで抱え込まない

不登校の子どもを持つ保護者の方は、将来についてさまざまな不安を抱えています。
学習の遅れ。
進学や就職。
友人関係。
経済的な自立。
本人が年齢を重ねるにつれて、心配の内容も変化していくでしょう。
こうした不安を、保護者が一人で抱え込む必要はありません。
例えば、学校の先生に進路の選択肢を相談したり、支援機関で本人への関わり方について相談したりすることもできます。
また、保護者自身の不安が強い場合には、カウンセリングなどを通じて気持ちを整理することも役立つかもしれません。
保護者の不安が少し整理されることで、子どもに対しても落ち着いて話しかけやすくなることがあります。
子どもの将来を心配することは、決して悪いことではありません。
ただ、その不安をすべて本人に伝えることが、必ずしも助けになるとは限らないのです。

将来を考えることは、今の自分を否定することではない

不登校の状態にあると、本人も保護者も、どうしても「今できていないこと」に目を向けがちです。
学校に行けていない。
勉強が進んでいない。
友人と会えていない。
将来の目標が決まっていない。
しかし、将来について考えることは、今の自分を否定することではありません。
今の生活の中にも、本人が大切にしていることや、興味を持っていることがあるかもしれません。
例えば、ゲームが好きなこと。
絵を描くことが好きなこと。
動画を見ることが好きなこと。
動物が好きなこと。
そうした興味が、そのまま将来の仕事につながるとは限りません。
それでも、自分が何を楽しいと感じるのか、どのようなことに関心があるのかを知ることは、自分自身を理解する手がかりになります。
将来について考えることは、「今の自分では駄目だから変わらなければならない」と考えることではなく、「今の自分には、これからどのような選択肢があるだろう」と考えることでもあるのです。

IPELで大切にしていること

IPELでは、不登校や引きこもりの状態にある方の支援において、本人の意思を尊重しながら、将来の選択肢を一緒に考えていくことを大切にしています。
学校に行くことや就職することだけを目標にするのではなく、その方がどのような生活を送りたいのか、何に興味があるのか、どのようなことに困っているのかを丁寧に整理していきます。
また、将来について考えることが負担になっている場合には、無理に結論を出そうとせず、まず現在の生活や心理状態を整えることから始めることもあります。
一方で、本人の気持ちを尊重することと、進路や就労について考えないことは同じではありません。
必要に応じて、進学や就労に関する情報を整理したり、本人が自分の興味や強みを理解できるよう支援したりすることも大切にしています。
また、保護者の方から、
「将来の話をすると、子どもが怒ってしまう」
「本人が何を考えているのかわからない」
「進路について、どこまで口を出していいのかわからない」
といったご相談をいただくこともあります。
そのようなときには、臨床心理士が心理学の視点から現在の状況を整理し、本人と保護者の双方にとって無理のない関わり方を一緒に考えていきます。
Fun Stepでは、通所・オンライン・家庭訪問など、それぞれの状況に応じた支援を行っています。
将来のことを考えるのは、今の自分を否定するためではなく、これからの自分にどのような可能性があるのかを見つけるためです。
お子さんの進路や将来についてお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

Fun Stepを運営する合同会社アイペル(大阪市淀川区)は、不登校や引きこもりの状態にある方の支援を行っております。
教室への通所やオンライン面談や家庭訪問といった方法で、お困りの方の相談に取り組みます。

当スクールでは、お子様の状態に即した形態での支援をご提供しております!
ご興味ある方はお問い合わせくださいね!

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